昨夜の木住野佳子の「プラハ」にインスパイアーされて、ボクは見知らぬプラハの迷宮に迷い込んでしまった・・・。
テレサ・ラッセル(1957〜)はいつも官能の迷宮にいるようだ。初めて見たニコラス・ローグ監督(テレサの夫ね)の「ジェラシー」(1979)ではアート・ガーファンクルを虜にしながら頽廃の街ウィーンを彷徨していたっけ。それからボブ・ラフェルソン監督の「ブラック・ウィドー」(1986)でもしかり・・・。
さて、この映画の公開当時の惹句「プラハ、午前0時2分前。 暗闇を影が走る……」はいかにも謎めいていて、主人公の作家カフカをジェレミー・アイアンズ、その他アレック・ギネスやイアン・ホルムといった名優たちが脇を固め、モノクロの映像が“謎の城”の中で突然カラーに変わったりといった、スティーヴン・ソダーバーグが「セックスと嘘とビデオテープ」(1989)の成功の余勢を駆って撮ったスタイリッシュな映画だった(全編に流れる民族楽器のシンバロンがいかにもだったり・・・)が、公開時に観た記憶はそれこそ迷宮入りで、残念ながら実際これは大ごけだったようだ。で、観返してみて確信したのだが、せっかくテレサ・ラッセルを起用しながら、そこには迷宮に必須の官能が欠けていたのだった。
テレサは実は官僚社会の破壊を目的とするアナーキストの一味。
“謎の城”の中ではマッド・サイエンティスト、ムルナウ博士(イアン・ホルムが嵌っている)の人体実験により不穏分子は洗脳され・・・。
最後まで抵抗したテレサは抹殺される・・・。