70年代後半については前にも書いたと思うが、ボクは美大をやっとこさで卒業し、ろくに就職活動もせず、随分いい加減にPレコード会社のデザイン室に潜り込んだのだった。今でも思い出すが、そこで最初にやらされた仕事がジュリーのポスターか何かの色校をトンボで断裁することだった。“ここに定規当ててカッターでちょんする訳ね”と、先輩に言われて思いっ切り紙の端から端まで切ったものだから、あとどこで合わせて切ればよいのかわからなくなって往生した。その後一月もしないうちにボクはりっぱなアートディレクターという肩書きを貰ったのだった。
で何を言いたいかというと、要するに音楽業界の片隅に生きていた関係で、安い給料の大半を日本のポップスや海外のロックやジャズのLP購入に充てていて、佐藤奈々子もそんな風にして出逢ったのだった。今もレコードラックのどこかに息を潜めて隠れていると思うが・・・。
佐藤奈々子は美女というカテゴリーには入らないと思うが、ちょっと分厚い唇とか、しどけない衣装の着方とか、レイジーアフタヌーンな眼差しとか、究極のウィスパーボイスとか、どこかそのきにさせるおんなだった。1977〜79年の間に4枚のアルバムを出した後、1980年以降、彼女はボクの理解を超えたニューウェイブなカテゴリーへ転身し、その後プロのカメラマンになったのだった。
このアルバムは何と佐藤奈々子が音楽業界に復帰を果たした第一作。ジャケットで使われている写真は、本人のポートレートを除いて全て彼女の作品が使われていて、なかなかおもしろい。
歌の方は随分角(?)が取れて優等生的になってしまったような気がする。

左下の写真が奈々子。