高校が阿佐谷だったので、卒業後も友人を訪ねてよく通った。ボクのジャズ鑑賞歴もちょうどその頃(1970年)から本格的に始まる。
そう言う訳で、友人に連れられて初めて入ったのが阿佐ヶ谷駅の北口にあった「毘沙門」。一階が中央に大きなテーブルが一つあるだけのスパゲッティの店で、その二階がジャズ喫茶だった。薄暗い小さな部屋を囲むように作りつけのイスと一人分の丸テーブルが7、8あったぐらいだろうか?そこでコーヒーに生クリームを浮かせて混ぜないで飲み、たばこを沢山吸い、ジャズをたらふく聴いてそのころの人生の大半を過ごした。若いマスターとちょっとくたびれたインテリ崩れのお兄さんと、女子美に在学中の化粧の上手なおねいさんが二人(同じ服装だったから、あれはユニフォームだったのだ!)、替わりばんこに店を切り盛りしていた。
当時はあまり興味のなかったジャズボーカルで、例外的によく「毘沙門」で聴いた一人がこのオランダのシンガー、アン・バートン(1933〜89)。こんな休日の夜にはくつろいだ気分の中で、彼女の歌声が当時の記憶とともにじんわり心に染み込んでくる。

一階のスパゲッティの店「毘沙門」のオーナーはお姉ちゃん(二階のジャズ喫茶「毘沙門」のマスターの実のお姉さん)と皆に呼ばれていた。当時としては阿佐谷に本格的なスパゲッティの店ができたと評判だった。

テーブルが一つあるだけのシンプルな作り。それまでスパゲッティといえばナポリタンとミートソースしか知らなかったボクには1.6mmの細い麺でカルボナーラだ、ボンゴレだ、バジリコだとカルチャーショックもいいとこだった!